「紙コップで飲むワインと、クリスタルグラスで飲むワインは味が違う」——これは単なる気分の問題ではありません。実は、ワイングラスの形状は流体力学や味覚生理学の観点から、ワインの味わいを物理的に変化させる重要なツールなのです。
なぜグラスについて見ていきましょう。
【理由その1】香りを滞留させるボウルの空間 グラスの膨らんだ部分を「ボウル」と呼びます。ワインの香りは揮発性の成分から成りますが、ボウルの広さがこの香りの立ち方を決定します。 たとえば、ブルゴーニュ型と呼ばれる金魚鉢のように丸く大きなグラスは、空気に触れる面積が広いため、香りが一気に揮発します。そして、すぼまった飲み口がその香りをグラス内に閉じ込めるため、鼻を近づけた時に華やかなアロマを爆発的に感じることができるのです。
【理由その2】飲み口の角度が舌の当たる位置を変える 人間の舌は、先端が甘味、側面が酸味、奥が苦味を感じやすい構造になっています。グラスの縁(リム)の反り方や直径によって、顔を傾ける角度が変わり、ワインが舌のどの部分に最初に触れるかがコントロールされます。 縦長のボルドー型グラスは、渋み(タンニン)の強いワインを飲むのに適していますが、これはワインが舌の奥へ直接流れ込む形状になっているため、過剰な渋みを感じにくくし、果実味を強調する働きがあるからです。
【理由その3】液体の温度変化 グラスの素材の薄さや、脚(ステム)の長さも重要です。ステムを握ることで体温がワインに伝わるのを防ぎ、適切な温度を保ちます。冷やして飲む白ワインのグラスが赤ワイン用より小ぶりなのは、温度が上がる前に飲み切れるように計算されているためです。
結論:マイグラスを持つという選択 もし、家で飲むワインがいまいち美味しくないと感じているなら、ワインのランクを上げる前に、3000円程度のきちんとしたグラスを1脚買ってみてください。 「ボルドー型(縦長)」と「ブルゴーニュ型(丸型)」、そして「白ワイン用(小ぶり)」の3つがあれば完璧ですが、まずは自分がよく飲むタイプのグラスを一つ手に入れるだけで、いつものワインが劇的に美味しくなるはずです。